「ハッ、ざまぁねえなあいつ」

「女のくせに首席で卒業しやがって」

「出しゃばりすぎなんだよ」

 ……あぁ、そういうことか。
 私はどうやら取り返しのつかないことをしてしまったらしい。
 誰も、婚約破棄されて困っている私を心配している人はいない。
 むしろ面白がるように笑っていたり、見下すような視線を送ってきている人がほとんどだった。
 その理由はおそらく、私が“女性”だから。

 男尊女卑で男を立てる時代。
 能力のありすぎる女性は男性から嫌悪される。
 結婚でも不利になるので、教養を身につけすぎないように大学進学をさせない家庭が多い。
 女性は男性の後ろをついて歩くのが美徳とされ、目立つような行いはすぐに叩かれてしまう。
 この名門魔法学校にも少なからずの女子生徒はいるが、彼女たちは魔法を学ぶのが目的ではなく優秀な男性魔術師たちと交流を持つために入学をしている。
 全力で魔法の勉学に取り組んでいる奇怪な女子生徒なんか、私だけしかいない。
 そして首席で卒業した私は、まさに男尊の思いを忘れた“生意気な女”ということになるのだ。

 爵位が上で旦那としての立場もあるマーシュ様は、そんな私が許せないでいるのだろう。
 私は意図せず、婚約者のマーシュ様の尊厳を踏みにじってしまっていたのだ。
 だから『花嫁修業が足りないから』というのは、あくまで婚約破棄するためのただの口実。
 私よりも女らしいパチュリーを新たな婚約者として見繕ったのも、単に私への当てつけ。
 話はすごく単純で、ようはマーシュ様はこう言いたいらしい。

 女のくせに生意気だから婚約破棄、と。