献立は焼きたてのマフィンの上に、ベーコンとスクランブルエッグを乗せたもの。
 それと新鮮なサラダと、少しスパイスの効いた温かいスープ。
 飲み物はさっぱりとした果実ジュースかハーブティーを選べたので、前者をもらうことにした。
 使用人さんがグラスに果実ジュースを注いでくれる光景を、私は呆然としながら眺める。

 私の家は伯爵位ではあるけど、特別裕福というわけではなかったから使用人さんは少なかった。
 個別に朝食を持って来てくれることなんてなかったし、そもそも部屋が狭かったから食事なんて落ち着いてできなかった。
 それが今では、何から何まで部屋に来た使用人さんが準備してくれる。
 しかも朝食に使われている食材は、この美食の国と言われているソイル王国の基準から見ても、どれも良質なものだった。

「それでは朝食が終わる頃にまた伺います。ごゆっくりお召し上がりください」

「はい、いただきます」

 最初はマフィンから。
 外側はザクッと焼かれていて、中はふわふわもちもちとした食感。
 具のベーコンはカリカリと香ばしく、スクランブルエッグはクリーミーな舌触りだ。
 そしてマフィンと具の間には、爽やかな香りのハーブソースが塗られている。
 だからだろうか、重さはまったくなく軽やかに食べ進めることができた。
 サラダに使われている野菜や果実ジュースも新鮮そのもの。

 まだ満足に開拓できていない地で、ここまでいいものが食べられるなんて思わなかった。
 ディルが上手いこと仕入れ先を確保しているのだろう。
 いずれはこのピートモス領でも農作や畜産が盛んに行われるだろうから、ますます鮮度のいい食材も手に入るに違いない。

「はぁ、美味しい……!」

 私は爽やかな朝日に照らされながら、格別な朝食に舌鼓を打ったのだった。