ピートモス領の屋敷に来た翌日。
 私は与えられた部屋で目を覚まし、知らない天井に少しぼんやりしてしまった。
 やや遅れて、実家を出て新しい屋敷にやってきたことを思い出す。
 そして天蓋付きの純白のベッドから起き上がると、改めて部屋を見渡して、高級な家具の数々に心が怯んでしまった。

 豪華な装飾が施されたテーブルやチェア。
 天蓋付きのベッドも全身を包み込んでくるかのようにフカフカである。
 部屋自体も一人用にしては広々としていて、隅々まで掃除が行き届いており、基調としている白が輝きを放っている。
 ていうか眠っている間にだろうか、上品な香りのアロマまで焚かれているではないか。
 ここ、本当に私の部屋なんだよね?

 一応は私も貴族の端くれなんだけど、ここまで豪勢な部屋は味わったことがない。
 カーテンを開けて朝日を浴びようとすると、部屋が三階にあることから、広い庭園と開拓途中の町の風景を眺めることができた。
 なんだか町を統治している王様になった気分。
 実際には統治者のディルの婚約者って立場だけど。
 と、その時、タイミングを見計らったかのようにドアがノックされた。

「ローズマリー様、朝食をお持ちしました」

「あっ、お願いします」

 使用人さんが朝食を持って来てくれたみたいで、ドアが開いた瞬間朝食の香りが鼻腔をくすぐってきた。