魔物は黒い狼のような姿。数は七体。おそらく『黒狼(ヘルウルフ)』だと思われる。

「魔物の姿を見て馬が取り乱してしまい、安全を考慮して急停止させていただきました。いかがいたしましょうか」

「ここで待機していてくれ。すぐにあの行商団を助ける」

「私も行くよ」

 ディルは迷う素振りを見せずに助けに向かい、私も後についていった。
 行商団は護衛をつけていなかったのか、剣や槍を持って自分たちの手で追い払おうとしている。
 でも、あれじゃダメだ。

 魔物の体内にも魔法の源となる魔素があり、奴らは無意識下でそれを鎧のように展開させて身を守っている。
 その不可視の魔素の鎧を『魔装』と呼び、普通の武器ではまったく傷を付けることができないようになっているのだ。
 魔装を打ち破るためには、それ以上に強い魔法で攻撃をするしかない。
 そのための魔術師。魔物討伐は私たちの仕事だ。

「ローズマリーは右手側の魔物を!」

「わかった!」

 短く声掛けをして、私たちは二手に分かれる。
 横目にディルが、手元から氷の剣を出しているのが見えて、彼も私と同じ考えであることを密かに悟った。
 行商団の人たちを巻き込まないように、大規模な魔法は使わずコンパクトな戦い方をする。
 そのためには近接戦闘用の魔法を使うのが得策で、私も近づいて戦うことにした。