「えっ? まあ、仕事の時間以外だったら好きに読んでくれて構わないよ。正直実用的じゃない魔導書も紛れていると思うけど」

「それでもいいの」

 非実用的であろうと、くだらないものであろうと、魔法は魔法。
 私を夢中にさせてくれた、不思議で面白い神秘的な力。
 私はどんな魔導書でも、全部ありがたく読ませてもらう。
 許可を得られたことで、私は気持ちが昂ってつい歓喜の声を漏らしてしまった。
 それを見たディルが、不意に微笑をたたえる。

「そういえば君、エルブ魔法学校でもしょっちゅう図書館にこもって、齧りつくように魔導書を読み漁っていたっけ。誰も使わないような役に立たない魔法が記された魔導書も、一冊一冊楽しそうにさ」

「だって魔導書には色んな魔法が書かれてて、魔導書の通りに訓練すれば“誰でも”その魔法を使えるようになるんだよ! すごく面白いじゃん!」

 魔法好きの私にとっては本当に偉大な書物だ。
 中身の魔法がどんなに非実用的であろうと。

「誰でもって……魔導書はそこまで万能な書物じゃないけど、まあ読みたいなら好きに屋敷の書斎で魔導書を読むといいよ。仕事以外の時間は、特に何も制限とかしないから」

「やった! ありがとう、ディル」

 ディルとの共同生活や開拓事業の手伝いに、密かに不安を抱いていたけれど……
 大好きな魔導書をたくさん読めることを知って、少しだけ気持ちが前のめりになったのだった。
 と、その時……

 不意に馬車が急停止し、私はディルに近づいていたこともあって、頭から彼のお腹に突っ込んでしまった。