そんなことしていたなんて全然知らなかった。
 あの難関試験の数々を、開拓事業の片手間で乗り越えていたというのはシンプルにすごい。

「入学当初から、僕がピートモス領を任されることになるのは知っていたから、在学中に少しでも開拓を進めておこうと思ってね。ただあの学校のカリキュラムをこなしながら領地開拓をするのは難しくて、ほとんど進行はできなかったけど」

「それでも必要な町と設備はとりあえず整えられたんでしょ? 充分すごいと思うけど……」

 そこで私は、ふとこんなことを思ってしまう。

「ていうかそれやってなかったら、普通にディルが魔法学校で一番になってたんじゃないの? なんか複雑な気分だよ」

「いいや、それはないね。絶対に」

「な、なんでそう言い切れるの?」

「順位だけで見れば、次席の僕と首席の君は一つしか違わないように見える。でも実際の実力はとんでもなくかけ離れているんだよ。たとえ僕が魔法の修練に注力していたとしても、この差は埋まらなかったはずだ」

「……なんかやけに素直だね」

 ディルはその後、「ただ冷静に分析した結果だよ」と言って、また口を結んで窓の外に目をやってしまった。