ソイル王国。
 プラント大陸の東部に位置するこの国は、豊かな自然と温暖な気候に恵まれている。
 そのため農作や畜産が盛んに行われており、質の高い食材と発展した食文化によって美食の国として知られている。
 また、魔術師の育成に精力的に取り組んでいる国としても有名で、近隣諸国においてはトップクラスの軍事力を有している。
 いまだに眠っている資源も多く開拓の余地を残しており、魔術師の質も一級で絶賛注目されている国と言ってもいい。

 そんなソイル王国の豊かな景観を眺めながら、私は馬車に揺られていた。
 現在、王国の最東部に位置するピートモス領を目指している最中である。
 座席は向かい合わせの形で二つ分のシートがあり、対角の部分にディルが座っている。
 私たちは特に何かを話すわけでもなく、二人して別の窓から外を眺めているだけで、馬車の中はやや気まずい空気に包まれていた。

 うーん、何か話した方がいいのかな。
 私たちはライバル関係で、仲良くお喋りする仲じゃないけど、さすがに沈黙が続くのは居心地が悪いから。
 それにこの先一緒に暮らしていくことになるんだし、険悪なままでいるのはお互いに気持ちがよくないよね。
 というわけで私の方から話題を振ることにした。

「今向かってるのはピートモス領にある屋敷って話だけど、それ以外の町とか村もちゃんと出来てるの? 未開拓の土地って聞いたけど」

「一応は少なからずの人里と、最低限の設備は整っているよ。エルブ英才魔法学校の在籍中に、勉学の傍らに少しずつ僕が開拓を手引きしたからね」

「へぇ、そうだったんだ」