「おい、見たことない馬車が停まってるぞ?」

「何かあったのか?」

 何やら屋敷の外が騒がしい。
 どうやらディルが大仰な馬車でやって来たから、屋敷周りに住んでいる町の人たちが戸惑っているみたいだ。
 これは早く出た方がよさそうだね。

「も、もう出発しようよディル。私は準備できてるから」

「そうかい。まああまり長居しても迷惑だろうし、さっそくピートモス領へ向かおうか」

 最後にディルは、ガーニッシュ伯爵領への援助について別途手紙にてやり取りをすると、お父様と約束を交わす。
 次いで馬車の方まで私を先導してくれた。
 一緒にそこに乗り込むと、お父様とお母様、それとミルラお兄様が別れの言葉をかけてくれる。

「気を付けて行くのよ、ローズマリー」

「ローズマリーの活躍、ここで楽しみにしているぞ」

「手紙もなるべく書くようにするよ」

「はい、行ってまいります。お父様、お母様、ミルラお兄様」

 家族に見守られながら、私はディルと一緒に馬車でピートモス領へと出発したのだった。