『婚約して実家を助ける見返りとして、君には領地開拓を手伝ってもらう』

 そう、これは取り引きの関係。
 ディルには実家を助けてもらう。代わりに私は領地開拓の手伝いで活躍しなければならない。
 もし目立った成果をあげられずに醜態を晒し続けていたら、きっと彼に見限られてしまうはずだ。
 だから絶対に失敗しないようにしないと。
 何よりも、大好きな魔法の分野で、ライバルに失望なんてされたくないから。

「それにしても、あなたは度々私たちを驚かせてくれるわね」

「えっ? どういうことですかお母様?」

「王立エルブ英才魔法学校じゃ、男の子たちを押しのけてずっと首席でいたんでしょ? あなた帰省してきても、自分から順位のこととか学校の様子とかあまり話さないから、この前噂で聞いて驚いたのよ」

 そ、そんな噂が流れていたなんて、全然知らなかった。
 ていうかそうか、私って自分から成績のことって話したりしてなかったのか。
 思い返してみれば、やれこの魔法がすごいだの、習ったばかりの魔法が難しいだの、魔法のことについてしか話していなかったかもしれない。
 そもそも家族のほうから聞かれなかったから話していなかっただけだ。