ソイル王国の最東部に位置するピートモス領。
 多量の鉱石を内包した鉱山や、貴重な薬草が採れる森などを保有している。
 しかしそのほとんどが厄介な魔物に占領されていたり、それらの影響で前人未到の手つかずの地になっている。
 聞けば文献に残されているような災厄級の魔物や、伝説の飛竜なども領内の奥地に眠っているとのこと。
 そのピートモス領の開拓の手引きをクローブ国王に任されたのが、第二王子のディルというわけだ。
 開拓する価値がとても大きい場所で、無事に成功させられたらソイル王国が飛躍的に発展すると言われている。
 まさかその開拓の手伝いを私がやることになるなんて思わなかったなぁ。

「そういうわけですので、家のことは心配しないでくださいミルラお兄様。私が必ずガーニッシュ伯爵家を助けてみせます」

「……情けなくて申し訳ないが、頼むローズマリー」

 ミルラお兄様は、将来ガーニッシュ伯爵家を継ぐことになっている次期当主。
 実家の貧困問題に一番頭を悩ませているのはお兄様なので、私は彼の期待を大いに背負っているというわけだ。
 私としても実家がしんどい思いをしているのは心苦しいので、なんとか助けになれたらと思っている。
 お兄様には幼い頃、散々可愛がってもらったし。

 そもそもなぜガーニッシュ伯爵家が資金繰りに苦難しているかというと、すべては災害が原因である。
 自然災害による領地内の不作。魔物災害による人的ならびに物的被害。
 元からそこまで潤った土地ではなかったため、その事態の修復に時間とお金がかかっている次第だ。
 経営不振など領主の不手際が原因ではないところが、なんとも歯痒いものである。
 ただその問題も、夫となるディルが解決してくれるようなのでひとまず安心していいだろう。
 まあ、私が愛想を尽かされて、ディルに捨てられなければの話だけど。