「王子と婚姻を結べるなんて本当にすごいじゃない! いったいどうやってあの神童の我儘王子を籠絡したっていうのよ」

「いや、別に籠絡したわけではないんですけど」

 あくまでこの結婚は取り引きというだけだし、そこに恋愛的な感情は皆無である。
 王子と結婚なんていいわねぇ、と呑気に母が微笑んでいて、その発言に父が唖然とした反応を示していると、傍で話を聞いていた兄のミルラが遅れて私に問いかけてきた。

「ほ、本当にディル王子と婚約を結べたのか? それにうちへの援助もしてくれるって……」

「ディルの方からそう提案してきたのです。婚約してガーニッシュ伯爵家を助けるから、その代わりに魔術師として領地開拓に手を貸してほしいと」

 それが交換条件と言われたので、私は迷うことなく了承をした。
 実家も助けてもらえて、憧れだった魔術師としての仕事もできるわけだから。

「第二王子のディル殿下は、確かピートモス領と呼ばれる地の開拓を任されると聞いている。魔物に占領されている区画が多く、開拓に難儀していると。そこの手助けを頼まれたわけか」

「はい。主に領内の魔物の殲滅や、魔法での開拓の援助が仕事になると聞いています」