「貴様は名門の王立エルブ英才魔法学校で首席の座を独占し続けた。そして首席のまま卒業し、歴代の首席卒業者の名簿にその名を刻んだ」

「それが何か、いけないことなのでしょうか……?」

 王立エルブ英才魔法学校。
 ソイル王国で随一と言われている名門魔法学校。
 最新鋭の環境で行われる教育は非常に厳しく、進級試験も相応の課題が用意されている。
 そのため六年の教育課程を修了できずに退学となる者が後を絶たない。
 卒業が叶っただけでも大変名誉なこととされており、その中で首席での卒業を果たした者たちはもはや英雄に近い扱いをされている。

 かくいう私――ローズマリー・ガーニッシュも、そんなエルブ魔法学校を首席で卒業した。
 しかしマーシュ様からの視線は氷のように冷たい。
 その意味を、私は今さらながら思い知ることになる。
「女のくせに魔法ばかりにうつつを抜かしおって、侯爵夫人となる自覚がまるで足りていないのだ貴様は!」

「えっ……?」

「ろくに花嫁修業の一つもせず、魔法の自主訓練ばかり……。そんなことでこの俺の妻が務まるとでも思っているのか!? エルブの首席をとったくらいで図に乗っているようだがな、貴様は花嫁として失格なのだ!」

 花嫁、失格……
 頭を鈍器で殴られたようなショックを受けた。
 私はこれでも、花嫁修業の方も抜かりなく積んでいた。
 卒業後はマーシュ様の妻としてウィザー侯爵家に嫁ぐことになっていたので、妻としての務めを全うできるように必死にスキルを磨いてきた。
 けどその努力は、マーシュ様には届いていなかったみたいだ。
 その時、タイミングを見計ったかのように、同じ卒業生の侯爵令嬢パチュリー・ユイルが、赤ドレスの裾を揺らしながらマーシュ様の隣に並ぶ。