振り返ってみれば、私はいつもディルに助けてもらっていた。
 励ましてもらった回数も数え切れない。
 だからその度に私は、少しずつディルに心を惹かれていたんだと思う。

「それで今度は、マーシュに襲われてるところも助けてくれた。その姿がとてもかっこよく見えて、その後に元気づけてくれたのもすごく嬉しかった。その時に私は、ディルのことを異性として、ちゃんと好きになったんだと思う」

 朧げに感じていた熱い気持ちは、いまだに抱いた経験がない恋心だったのだと思う。
 口にしてみて、違和感がまったくなく、改めてそれが恋なのだと確信することができた。
 本音を明かしたことでとても晴々とした気持ちになれたが、反対にディルは私を見つめながら固まっている。
 次いでハッと我に返ると、唐突に顔を真っ赤にした。
 その顔を恥ずかしそうに片手で隠しながら戸惑いを見せる。

「ま、まさか、いい返事をもらえるとは思わなかったからさ。つい呆然としてしまって」

 次いでディルは、少し複雑そうな表情で続ける。

「先ほども言ったように、この告白は何かを期待してのものだったわけじゃないんだ。それで『いつか君を振り向かせてみせる』って、最後に言おうとしていたんだけど……」

 締めの言葉を考えていたのに、それを言う機会を失くして困っているようだ。
 でも、その言葉はもう必要ない。
 だって……

「私はもう、あなたの方をちゃんと向いてるよ」

「――っ!」