それだけ私の力を認めてくれているってことか。
 ライバルのディルからここまで高く買ってもらっていたなんて、なんか少し照れくさいな。
 まあディルがそれでいいと言うのなら、私も気にする必要はないのか。
 ただ……

「お互いに悪い話じゃないのはわかったよ。でもさ、気持ち的な問題としてはどうなの?」

「気持ち的な問題?」

「ほら、私たちってずっといがみ合ってきた関係でしょ。だからそんな私と結婚することに抵抗とかないのかなって」

 私たちは今でも対抗心を燃やし合っているライバル関係。
 魔法学校では常に成績を競い合っていて、口喧嘩をした回数は今では数え切れない。
 振り返ればすぐにでも、ディルと言い争っていた学生時代の風景を思い出すことができる。

『僕が倒した魔物の方が絶対に大きいはずだ!』

『どう見ても私が倒した魔物の方が大きいでしょ! 今回の勝負も私の勝ちよ!』

 学校の課題から些細な争い事の一つ一つまで、私たちは常に勝ち負けにこだわり続けてきた。
 そんな相手と結婚して夫婦関係になることに、ディルは抵抗とか感じないのかな。
 そう思って問いかけると、ディルは何かを思うように噴水を見つめて、やや遅れて返答をしてきた。

「……別に、君との結婚に抵抗はないよ。僕は第二王子として自覚した瞬間から、結婚はあくまで取り引きの手段としか考えていないから。そういう君の方こそどうなんだい?」

「わたし? うーん、ディルと結婚かぁ……」