「どうしたのディル? もしかして次の作戦が決まった? 森林地帯の復興? それとも奥地の開拓?」

「あまりプレッシャーをかけないでもらえるかな。まだどれも具体的な作戦は立っていないよ」

「ご、ごめんごめん」

 まだ王都から帰ってきたばかりで、確かにそれは無茶だったかもしれない。
 前のめりになってしまったことを申し訳なく思っていると、ディルが壁際に置いてある椅子を指で差して尋ねてきた。

「少し別件で話をしにきたんだ。座ってもいいかい?」

「うん、どうぞ」

 頷くと、ディルは椅子を持ってきて机の前に座る。
 って、ここはディルの屋敷なわけで、私が了承するのはおかしい気がするけど。
 遅れてそんなことを思いながら、ディルがなんだか少し改まった様子に見えて、私は訝しい気持ちを抱いた。
 するとディルは端的に話を切り出してくる。

「今夜、晩餐でも一緒にどうだい?」

「えっ、ご飯?」

「今夜は天気がよくて星が綺麗に見えるらしい。だからよかったらバルコニーで、一緒に食事でもしようかなって思ってね」

 珍しいお誘いに、思わず面食らってしまう。
 まさか晩ご飯のお誘いをしに来たなんて、まったくの予想外だ。
 今までそんなこと一度も言ったことなかったのに。
 でも、その誘いにはちゃんとした理由があった。