ここまで大きな魔物と戦うのは初めてだ。
 でも、やることはきっと変わらないはず。
 魔物が纏っている魔装を、魔法の力で打ち砕く。
 そして本体に決定的な一撃を与えて、討伐を完遂させるんだ。
 私の全力を……今まで積み重ねてきた修練の成果を……何よりも大好きな魔法を……

 ただまっすぐに、相手に叩き込めばいい!

「グオオォォォ!!!」

 暴走していた飛竜が、私たちの気配を気取ってこちらを振り向く。
 次いで怒りの咆哮と共に、火炎の息を吹き出してきた。
 魔法での防衛を試みようとした瞬間、隣でディルが叫ぶ。

「ローズマリーは攻撃に集中してくれ!」

 彼のその声に、私はすぐに思考を入れ替える。
 防衛のために回そうと思っていた魔素を、即座に攻撃の魔法用に転用させた。
 そして飛竜の息吹は、代わりにディルが対処してくれる。

「【逆行する白滝(リバース・フォール)】」

 地面から噴水のように、巨大な純白の水柱が立ち昇った。
 まるで流れに逆らうかのように、空へと昇っていく滝のように見える魔法。
 水の壁と化したその魔法は、飛竜の高熱の息吹を完全にせき止めてくれた。
 その間に私は、巨大な魔物に対して効果的な魔法を選び、右手を構えて発動を試みる。

(性質は鋼。形状は大矢。【巨人殺しの鋼矢(ジャイヤント・キリング)】)

 まずは一つ。
 さらにすかさずもう一つの魔法を発動させる。

(性質は風。形状は竜巻。【局所的な旋風(ローカル・ボルテックス)】)