だからこの男の悪意なんかで、すべてを台無しにされてたまるか。
 これまでみんなで開拓を進めてきた大切な場所を、私の力を認めてくれた開拓兵のみんなを、傷付けさせるわけにはいかない。
 私が全部、守ってみせる。

「あんたの思い通りになんか、絶対にさせない! 黒竜(シャドウ)は必ず、私が止めてみせる!」

「くっ……!」

 マーシュが苛立ちを覚えたように顔をしかめる。
 私が口車に乗らず、諦める様子を見せなかったからか、気に食わなそうに歯を食いしばっていた。
 すると憤りが頂点に達したのか、魔法で鋼の剣を生成して、怒りのままにこちらに駆け出してくる。

「うらあぁぁぁ!!!」

 怒りに狂ったその姿に、私は気圧されることなく冷静に奴を見据えた。
 ディルが私を庇うように立っていたけれど、「もう大丈夫」と言って私は前に出る。
 ここは、前のように魔法が封じられた空間ではない。
 魔術師としてなら、私は絶対にマーシュに遅れなんかとらない。
 この男は私が止める。

(性質は雷。形状は鎖。【交錯する雷鎖(パラライズ・チェイン)】)

 体内の魔素を高速で操作し、右手に魔素を集中させる。
 そしてマーシュの剣が届くよりも先に、四階位魔法を速射した。
 右手から鎖状の雷が迸り、こちらに向かってきていたマーシュの肉体を一瞬にして縛り上げる。
 同時に奴の全身に、青白い電流が走った。