卒業パーティーの会場を後にして、ディルに連れられるままに町を歩く。
 お互いに整ったフロックコートとドレスを着ているため、道ゆく人たちから視線を集めてしまった。
 その目に私は気恥ずかしい思いをしていたけど、ディルの足取りには一切の迷いがなく、遅れて私は彼の背中に問いかける。

「ちょ、ちょっとディル、どこに行くつもりなの?」

「落ち着いて話せる場所に移動しよう。ここだとまだ人が多いから」

 確かに私としてもディルとは落ち着いて話をしたかったし、聞きたいことが山ほどあった。
 だからディルに身を任せることにする。
 やがて王都の南部に位置する噴水広場に辿り着くと、ディルはそこで足を止めた。
 夜になると巨大な噴水が街灯に照らされて、煌びやかな雰囲気を醸し出す場所。
 そのため恋人たちのデートスポットとして名高いが、今宵はやや時間が遅いこともあって人気がほとんどない。
 なんだか気まずいと思ったけれど、ディルに他意はなさそうで、ここで話をすることに決めたようだ。
 私の手を離してこちらを振り返る。

「……ごめん、勝手に連れ出して」

「えっ?」

「あと、婚約のことも何も相談せずに、こっちで色々と決めて」