さすがは王宮剣術を嗜んでいるだけのことはある。
 魔物との戦闘でも魔法に剣術を加えて、独自のスタイルで戦っているし、こういう不測の事態にも対処できるのはとても便利だと思った。

「私も剣術習ってみようかな」

 ディルに教えてもらうこともできるし。
 そう考えて何気なく呟くと、ディルは複雑そうな顔でかぶりを振った。

「君に剣術は似合わないよ」

「えっ、どうして?」

「剣術は人を殺めるための技術だから」

 ディルは微かに俯いて、自分の手元を見下ろしながら続ける。

「魔法は魔物を倒すための力であるのと同時に、人々の生活を豊かにする奇跡でもある。でも剣術は人を殺すためだけに進化を遂げてきた恐ろしい技術だ。習っていてとても気持ちのいいものではない」

 ……そうなんだ。
 私は剣術を習ったことがないからわからないけど、ディルの表情から穏やかではない気持ちが伝わってくる。
 まあちんちくりんの私には確かに似合わないかもね。やっぱり剣術を学ぶのはやめておこう。

「君はいつもみたいに、くだらない悪戯のような魔法に夢中になっていればいいのさ。その方が断然似合っているよ」

「く、くだらなくなんてないわよ!」

 ムキになって言い返すと、ディルはその返しを求めていたと言わんばかりに小さく笑った。
 わかりやすく揶揄われてしまった。