「――っ!?」

 爆音と衝撃が一気に襲いかかってきて、周りの空気が一瞬にして熱くなる。
 とてつもない威力の爆発で、思わず息を詰まらせるけれど、ディルのおかげで大事には至らなかった。
 彼が私を抱えたまま、廊下に飛び出してくれていなければ、怪我どころの話では済まなかったと思う。
 やがて爆風と熱気が収まると、部屋の中には焼けこげた家具と煤だらけの壁と天井、開け放たれた窓があるだけだった。

「……逃げられたか」

 そこにマーシュの姿がないことに、ディルは複雑そうな顔を見せる。
 対して私は、目まぐるしく変わる展開に頭が追いつかず、我知らず疑問を口にしていた。

「なんで、部屋が突然爆発なんて……」

「爆薬だよ。爆発の寸前、部屋の中から火薬の独特の臭いがした。おそらく部屋に夢醒石を置いた際に、一緒に爆薬も仕掛けたんじゃないかな」

 そんなものまで仕込んでいたなんて。
 ディルが爆薬の臭いに気付いてくれていなかったら、私たちは今頃爆発に巻き込まれていた。

「そ、そもそも、どうして爆薬なんて仕掛けて……? 私を無力化するなら、夢醒石だけで充分なのに……」

「こればっかりは憶測でしか語れないけど……万が一、君が夢醒石への対処法を心得ていた際に、最終手段として無理心中でも企んでいたんじゃないかな」

 その答えに、背筋がゾッとする。
 確かにあの男ならやりかねない。
 自分の思い通りにならなければ、自らの命を投げ打ってでも私に危害を加えてくるだろう。