「抵抗したければするがいい。貴様の好きなくだらない“魔法”とやらでな」

 マーシュはそう言いながらこちらに近づいてくる。
 強がりなどではなく、本気で私の魔法を警戒していない様子だった。
 やりすぎれば大怪我をさせてしまうかもしれない。
 けど今はそんなことを気にしている場合じゃない。
 強烈な危機感を覚えた私は、容赦せずに魔法での迎撃を試みた。
 刹那――

「えっ?」

 己に降りかかっている異変に、遅まきながら気が付く。
 魔法が……まったく使えなかった。

「どう、して……?」

 魔素を性質変化させられない。
 どころか体の中にあるはずの魔素をほとんど感じ取ることができない。
 まるで魔素が眠りについてしまったかのように。
 今日は一度も魔法を使っていないので、魔素切れは起こしていないはず。
 私の体に、何が起きて……

「まさか、夢醒石(むせいせき)……?」

 私は反射的に部屋の中を見渡す。
 すると部屋の隅々に、青白く光る石が見つかりづらいように置かれているのを見つけた。