思わぬ人物が目の前に現れて、私は呆然と立ち尽くす。
 彼はいつも以上に豪勢なフロックコートに身を包み、多くの装飾品を着けて着飾っていた。
 どうして彼がここにいるのか。そして私の前に姿を現したのか。
 それらの疑問を解消するべく、私は声を震わせながらも問いかける。

「祝賀会に、参加していたのですか?」

「あぁ、父の伝手で招待状をもらってな」

 マーシュ様は懐から一通の封筒を取り出す。
 それをすぐに仕舞うと、彼は私の頭から足先まで視線を動かして、唐突に微笑んだ。

「そのドレス、とても似合っているじゃないか。まるで見違えたよ」

「…………」

 耳を疑う言葉を聞かされて絶句する。
 マーシュ様の口から出たとは思えない台詞だった。
 今までそんなこと、ただの一度も言ってくれたことがないのに。
 彼のこんな微笑みを見たのもこれが初めてだし、この人はいったいここに何をしに来たんだろう。

「……なんのご用でしょうか?」

 募るばかりの警戒心を表に出すように、顔をしかめながら再び問いかける。
 明らかに私に対して用事があるように、この休憩室に入ってきた。
 これで警戒するなと言う方が無理である。
 するとマーシュ様は、優しげな微笑みをそのままに、信じがたいことを告げてきた。

「ローズマリー……俺たち、やり直さないか?」

「はっ?」