……そうだったんだ。
 ディルが私を最大の功労者として報告してくれた成果は、きちんと出ているってことだ。
 もしかしたら今までの常識や価値観というものが、静かに変わり始めているのかもしれない。

「女性の魔術師を認めてくれる人たちが増えてきた。時代の転換期がすぐそこまで迫ってきているんだ。それは誰でもないローズマリーが頑張ったおかげで、君は新時代の先駆者とも呼べるほどの存在になった。だから今さら王子の婚約者になるくらい、なんてことはないだろう?」

「…………」

 そう言ってもらえると、確かに少しだけ気持ちが楽になってくる。
 ディルは遠回しにこう言っているんだ。
 もっと自分に自信を持てと。
 私の力と頑張りは、この景色が証明してくれているんだと。
 今一度それを教えてもらった私は、拍手を送ってくれている観客たちを見つめながらディルに返した。

「私、これからも頑張るね。ディルの婚約者として、一番のライバルとして」

「あぁ、こっちこそよろしく」

 私とディルは、皆に見えないように背中の方で、握り拳をトンとぶつけ合ったのだった。