髪も綺麗にセットされていて、普段と雰囲気がガラリと変わっていることから、思わず私は彼を見つめながら放心してしまう。
 随分と様になっていて、正直かっこいいと思って見惚れてしまった。
 思えばこの人は、容姿端麗の王子としても知られていて、想いを寄せる令嬢は多くいると聞く。
 そんなディルが気合を入れてめかし込めば、見惚れるほどにかっこよくなって当然ではあるか。
 なんか改めて、この人の婚約者として紹介されるのがプレッシャーになってきたなぁ。

 見惚れてしまったことに悔しさを覚えながら我に返ると、ディルの様子が少しおかしいことに遅れて気が付く。
 何やら彼も、固まって立ち尽くしているように見えた。
 なんでディルまで固まってるの?
 これはひょっとしてあれかな、ドレスまで新調したのに、私の見た目がちんちくりんから変わってなくて呆れてしまっているのかな?
 真意はわからなかったけど、ディルは我に返った後、遅れて感想を送ってきた。

「……似合っているよ、そのドレス。とても大人っぽく見える」

「無理してお世辞言わなくていいよ。自分の見た目が子供っぽいのは自覚してるから」

 まさかディルに気を遣われることになるなんて。
 せめてあと少し身長があれば……。もしくは胸だけでも大きく成長していれば……。
 と、今さら嘆いたところで現実は変わらないので、諦めて祝賀会の会場に向かおうとすると……

「……お世辞じゃないんだけどな」

「んっ?」

 ディルが何かを呟いた気がした。
 しかし彼は何事もなかったように廊下を歩き始めたので、私は言及せずに彼の後に続いたのだった。