「自覚はないかもしれないけど、森の開拓を妨げていたあの二匹の大蛇は、随分前からソイル王国を悩ませていた災厄なんだよ。それを無事に討伐できて、国の災厄を一つ取り払ったとなれば、充分に大仕事をしたと言えるだろう」

「そ、そんなに厄介な魔物たちだったんだ……」

 学生時代は王都にあった寄宿舎で過ごしていたけど、大蛇の噂は聞いたことがなかったな。
 私が魔法にしか目が向いていなかったせいかもしれないけど。
 でもディルがそう言うのだから間違いないはず。
 災厄とも認められていた大蛇の魔物を倒して、領地開拓を進めたとなれば確かに大業だ。

「それに直近の開拓作戦もすべて成功しているし、有益な領地を順調に切り拓いて、王国の発展に大いに貢献している。その先導者が自分の息子である第二王子となれば、存在を示す機会として活用しない手はないだろう」

「はぁ、なるほどね」

 王族として、威厳を示す絶好の機会ということか。
 大業を果たした王子を大々的に祝すことで、ディルの存在と実力、そして王族の矜持を今一度世間に示すことができる。
 ということはわかったんだけど……

「それで、なんで私まで誘ってくれたの? ディルの存在を示す祝賀会なら、別に私までついて行く必要はないと思うんだけど」

「ちょうどいい機会だからさ、ローズマリーのこともみんなに紹介したいと思ってね。僕の婚約者として」

「あっ……」

 言われて思い出す。
 そういえばまだ、正式にディルの婚約者になったことを公表していないんだった。
 すでに知っている人も何人かいるだろうけど、ほとんどの人たちが私たちの婚約を知らないはず。
 確かにタイミング的には、祝賀会で公表するのがベストかもしれない。
 ただ……