彼がここにやってくる理由は、いつも決まっている。

「もしかして次の作戦が決まったの?」

「それも近いうちに決まる予定だけど、今回はまた別の話だ」

 てっきり次の作戦が決まって、それを伝えにきたのかと思ったけど、どうやら違うらしい。
 別の話ってなんだろうと思っていると、ディルは思いがけないことを言ってきた。

「僕と一緒に少しだけ王都に戻ってくれないかな?」

「王都に? どうして?」

「父様が……クローブ国王が領地開拓の前進を祝して、祝賀会を開いてくれるそうなんだ。そこに開拓の先導者として僕が呼ばれていてね」

 へぇ、祝賀会かぁ。
 よく王都の王立劇場とか王宮で、王様主催の祝賀会が催されているのを見たことがある。
 王国軍が何か大きな戦果をあげた時とか、王族関連の大事な記念日とか。
 どうやらその祝賀会を、このピートモス領の開拓が進んだことを記念して開いてくれるらしい。

「ディルが本格的に領地を任されてから、まだそんなに経ってないのに、もう祝賀会とか開いてくれるんだ。優しい国王様だね」

「あの人が祝い事とか祭り事が好きなだけだよ。まああとは単純に、ピートモス領の開拓の前進がかなりの大仕事だからっていう理由もあるけど」

「大仕事?」

 思わず眉を寄せて怪訝な顔をすると、ディルは呆れたように肩をすくめた。