どさっとラグの上に倒されると、
頭の横に肘をついた筒井さんが
真上から私を見下ろしている


「つ、筒井さん、聞いてました?
 だからこういうことを」


『こういうことって例えばキスとか?』


ドクン‥‥


筒井さんの親指が私の下唇を
端からゆっくりなぞり上唇も
なぞっていく


『何を聞いて信じてるかは知らないけど
 そんなヤツがいたらお前に治療なんか
 するわけないだろ?』


へっ?

いない?


ポカンと拍子抜けしてしまうと、
真上から見下ろす筒井さんが
面白そうに笑っている


「わ、笑わないでください!
 今のって本当なんですか?」


喉を鳴らしながらククッと笑うと、
顔をグッと近づけてきた筒井さんが
鼻先に唇を落とし思いっきり鼻を
摘んだ。


『お前の大丈夫が俺には
 1番大丈夫じゃない‥‥
 これ以上心配させるなよ?』


「えっ?ンッ!!」


重ねられた唇が何度も角度を変え、
咄嗟のことで驚く私は、
息が苦しくなり筒井さんの肩を両手で
押すと離れた後に
おでこから頭に向かって
ゆっくりと優しく手が触れた


『今のは治療の分。
 次のはただもう一度したいだけ‥』


「ンンッ‥‥チュ‥‥ンッ」


すごい緊張と恥ずかしさで、
瞳から涙が溢れたのを見逃さないように
筒井さんが指でなぞると、もう一度深く
唇が何度も重ねられ
私が酸欠になったのを見て
また面白そうに笑っていた


『まだご飯食べてないよな?』


「‥‥はい、まだですけど何か
 作りましょうか?」


時計を見ると18時30分を過ぎる頃で、
私の体を起こしてくれると、
筒井さんは何処かに電話をかけ始めた


『もしもし‥‥あ、俺。
 うん‥‥オッケーじゃあまた後で。』


短い電話を終えると、
筒井さんがコップのお茶を飲み干した。


『よし、出掛けるから準備してこい。
 ご飯食べに行くぞ?
 下で待ってるから。』


「えっ!私スッピンですし‥
 あの、何処に行かれるんですか?」



シャワーを浴びたままで
よく考えたら部屋着も適当で
今更だけど恥ずかしくなってきた


『拓巳と古平、それに犬塚さんが
 お前と一緒に食べたいから
 待ってるってさ。
 行く?行かない?』


胸が熱くて苦しくなるのを堪える


「‥行きます」


『フッ‥‥。いい子。
 急がなくてもアイツら多分
 待てなくて飲んでるからゆっくり
 準備しておいで。』


おでこに唇を落とされると
筒井さんは立ち上がり玄関から
出て行ってしまった


‥‥‥‥うわぁ
何?この信じられない状況は‥‥


あんなに深く何回も‥‥


余韻に浸りたいけど、待たせたくなくて
急いで顔を冷やすと最低限のメイクを
施し、服を着替えてから
筒井さんの元へ向かった