それに‥‥

八木さんが言っていたことが本当でも、
私はやっぱり筒井さんと会えなくなるのはもう嫌だと思えた。


告白をした時とは違って、
知らない筒井さんを沢山知ることが
出来て、もう一度恋をしたから。


お付き合いしてる人がいるのは
仕方のないことだから、
これ以上迷惑をかけないように
しないといけないな‥‥


課だって違うのに、いつもいつも
筒井さんに助けられている


これでは何も変われない。


「あの‥‥この傷のことは‥」


告げ口したら許さない‥という
言葉が頭から離れずに言葉を飲み込む


『はぁ‥‥あのさ、
 あの大企業の受付に監視カメラが
 何台ついてるか知ってるか?』


えっ?
監視カメラ?


そんなの気にしたことなかったけど、
吹き抜けのエントランスの何処かに
見たことがあっただろうか?


『悪いが、昨日の帰り、受付で経理の
 八木さんとお前が話してる
 内容も全部もう分かってる。
 たまたま2人を見かけたと言っていた人がいたから警備で確認した。』


嘘!!
そんな‥‥

筒井さんは知ってた上でここに来たの?


昨日の事を思いだすと、勝手に
手が震えてしまい筒井さんがまた
私の手を強く握った


『俺はこの事を‥‥懲罰委員会に
 かけてもいいと思ってる。
 それくらいお前は何もしてないのに、
 傷まで負うことになったから。』


「そんな‥‥私はそんなこと」


『俺が嫌なんだよ‥‥。
 もうこんなこと2度と起こっては
 いけないし、お前にも傷ついて
 欲しくない。少なくとも今回の
 事に関わっているみたいだしな?』


筒井さん‥‥


「あ、あの‥‥その‥
 お付き合いされてる人がいるのは
 いいと思うんです。
 でも、こんな風に手を握ったり
 その‥‥治療?みたいなことは
 彼女さんにしてみたら傷つく事に
 なると思うのでもう個人的に
 筒井さんも関わるのは辞めた方が
 いいと思います。」


八木さんを庇うわけではないけど、
そういう人がいるのに、私といたり
仲良くしてると、今後もやっぱり
同じ事を繰り返すと思う


私の手を包んでいた手から
そっと自分の手を抜くと頭を下げた


「こんな子供みたいなわたしを
 気にかけてくださって本当に
 嬉しかったです。
 筒井さんが居なかったら私は
 とっくに会社を辞めていました。
 今はまだすぐには変われませんが、
 いっぱい成長しますから、
 私はもう大丈夫です。」


会えなくなるわけじゃないし、
今後もし筒井さんの大切にしている
人を見たら悲しくなるとは思う。


亮さんと約束したから、
違う立場で支えられれば嬉しいし‥


『お前さ、
 何1人で自己完結してるんだよ。』


「えっ?‥」