迷惑をかけてしまったのに、
優しいメッセージが逆にツラいなんて
思えてしまう


私が気を使わないように古平さんは
送ってくださったのに、自分のことで
まわりを巻き込んでしまったことが
ツラくて仕方ない


菖蒲にも何も言えてない

佐藤さんにも秘書課の方にも
迷惑をかけた。

蓮見さんや古平さんそれに‥‥
筒井さんにまで‥‥


お会計を済ませてから薬局に行き
薬を受け取ると、平日の昼間から
オープンカフェでひたすら
街を行き交う人を眺めていた。


あの人はどんな仕事をしてるんだろう‥

営業かな?
何年目の人なんだろう‥
仕事はキツイ?それとも楽しい?


話し相手もいないから、
心の中で1人で会話してると
虚しくなってそのまま家に帰宅した。


ベッドに寝転んでから
まだ少し痛む腕を上に持ち上げ
瞳を閉じると、起き上がり
筆をとった。


くよくよしてても仕方ない。
今私に出来ることをしないと‥‥


それでみんなが幸せになれれば
いいと思えたから。


午後は落ち着かなくて、無駄に
洗濯をしたり部屋を片付けたり
していると、あっという間に
夕方になってしまった。


仕事してても1日終わるのが早いのに
何にもしてなくても終わっちゃった‥


汗をかいたので、シャワーを
浴びてから部屋に戻ると、
玄関のインターホンが鳴らされたので
ドアモニターを見ると、そこに
筒井さんが立っていて驚いてしまう


‥‥なんで!?
焦っていると今度はスマホが鳴り
急いで電話に出た


『筒井だけど、
 今大丈夫なら開けてくれないか?』


「あ、すみません‥すぐ開けます。」


いつからいたのか分からないけど、
暑い中外で上司を待たせては
いけないと思い、急いで玄関に行くと
チェーンを外してからドアを開けた。


『悪い、連絡なしで来てしまって。』


「い、いえ、大丈夫です。
 あ‥暑いのでどうぞ。」


筒井さんを玄関に招き入れると、
私を見て何故か笑った。


『フッ‥‥。
 思ったより元気そうだな‥
 上がってもいいか?』


「あ、はい!すみません立たせた
 ままで気も使えず‥」


『おい、今は勤務時間外だ。
 気を使うな。』


まだ濡れたままの頭をクシャッと
撫でられると、筒井さんは靴を脱いで
からきちんと靴の向きを揃えた。


「どうぞ‥‥ほんとに狭いので
 すみません。ソファに座って
 くださいね。」


『ありがとう。お前もこっちに
 来て座れ。』


1DKの狭い8畳のリビングとも言えない
空間に置かれたソファに筒井さんが
座り、私は冷蔵庫からお茶を取り出すと
コップに注いでテーブルに置いた。


「あ!すみません‥薬だけ塗って
いいですか?今シャワー浴びたばかりで
見苦しいから向こうで」


『見せてみろ。手伝うから。』


えっ?


怪我してない方の手首を掴まれると、
筒井さんの隣に座らされてしまい
私の腕の傷口に視線をうつした。


『まだ痛いよな‥‥悪かった。
 昨日気付いてやれなくて‥』


「‥‥‥‥」


テーブルに置いてあった薬を
傷口に塗るところも目を逸らさずに
見ていて、ガーゼとテープを貼るのを
一緒に手伝ってくれた


爪痕ってことはもうバレてるとは
思うけど、私は筒井さんに何も
話すつもりはないし、深呼吸を
した後口角をあげて頭を下げた。


「筒井さん、私会社を辞めます。」