扉を出ると、そこで待っていた人に
心臓がドクンと大きく跳ねた


『怪我をしたと聞いたんだが、
 どういうことだ?』


ああ‥‥古平さんか蓮見さんが
言ってしまったのかな‥‥


絶対今回だけは筒井さんに
知られたくはなかったのに‥


『筒井さん、私は仕事に行きますので
 あとはお願いします。』


えっ?
古平さん!?


「あ、あの、私も仕事に!」


『井崎さんはまずは病院に行って。
 戻り次第面談をするから人事の方に
 声をかけてくれるか?
 一応診断書も用意してもらえると
 助かる。』


「そんな‥‥こんな傷大丈夫です!」


『いいか?
 大丈夫かそうでないかはお前が
 決めることじゃない。行くぞ。』


「‥‥‥‥はい」


背中を支えられながら、
エントランスに向かうと、
佐藤さんと目が合い頭を下げた


『すみません、〇〇総合病院まで
 お願いします。‥‥乗って。』


多分今ここで歩いて行きますと言っても
また叱られるだけだと思い、
いつの間に用意されていたのか
タクシーの後部座席に座ると
筒井さんと視線がぶつかり
目を逸らしてしまった。


ドアが閉められると、
静かに動き出したタクシーの中で、
堪えていた涙が溢れ、慌てて
ハンカチで涙を押さえる


また泣いたら心配をかけてしまう


なんでいつもこうなって
しまうんだろう。
1人で何にも解決できない


八木さんのことだって、
筒井さんは私のことなんかそういう
対象で見てないから大丈夫ですって
言えていたらこんなことには
なってなかったかもしれないのに。



(お付き合いされてる人がいる)


八木さんのことが本当なら、
例え治療だとしてもキスなんか
して欲しくなかった‥‥


もう放っておいてほしい‥‥


病院に着くと、何科に行けば
いいのか分からず受付に行くと
外科を紹介されたので
順番を待つことにした。


金曜日だともっと混んでるかと
思ったけれど、外科はスムーズに
診察が進んでいるのか30分も
待たずに診てもらうことができたのだ


『膿んでしまってるから、抗生剤入りの薬を毎日お風呂上がりに塗ってから
ガーゼを軽く当ててテープで
止めてください。夏場は風を通した
方が早く治りやすいので、毎日清潔
にして必ずガーゼはこまめに交換して
くださいね。』


「はい、ありがとうございます。
 あ、あの‥診断書を書いていただく
 ことは出来ますか?」


『大丈夫ですよ。お帰りの際に
 処方箋と一緒にお渡しします。
 お大事にしてください。』


傷口を綺麗にしてもらった後
薬を塗ってもらい念のため痛み止めの
処方も出してもらった。


お会計を待ちながらスマホを
確認すると、ショートメールが届いていたので開いてみた。

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井崎さんお疲れ様です。
病院が終わったら今日は
そのまま帰宅してオッケーです。
早退扱いにはなるけど、
今は忙しくない時期だから、
早く治して月曜日からまた頑張ろう?
誰も今日のことを責めないから
ゆっくり休んでね。
 
古平
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