血なんて出てないのに‥‥

えっ!!?

出勤した時は血なんて出てなかった
はずなのに、包帯にうっすら
血がついてしまっていて驚いた


掃除とかして何度も肘を曲げたり
してたから?


「佐藤さんご迷惑をおかけして
 すみません。」


『大丈夫よ。応援くるから
 まずは手当してもらって?
 その腕では受付は不可能だから。』


ドクン‥‥
 

少し厳しく注意を受けると、
頭を下げてから古平さんに
付き添われながら医務室へ向かった。


『おはようございます。
 すみません怪我人1人対応
 お願いします。』


さっきは電気が付いてなかった
医務室が明るくなっていて、
女性の保険医さんが出勤してみえた。


『おはようございます。
 そこに座って?』


「あ、はい‥失礼します。
 古平さんお仕事に行かれて大丈夫
 ですよ?後ですぐ行きますので。」


『大丈夫よ、IDは蓮見さんに
 通して貰うように頼んだから
 一緒に待ってるから。』


どうしよう‥‥‥

傷口を見られたら爪の痕って
バレてしまうかもしれないのに‥‥


『包帯取るわね‥‥‥‥
 ああ‥これここでは駄目だわ。
 酷く化膿してるから早めに
 病院行った方がいいわ?』


包帯の下のガーゼの下は、
昨日つけられた時と全く変わって
しまってて、トビヒのように
かぶれてしまうだけじゃなく、
バイ菌が入ってしまったのか
爪痕の部分は膿んでしまっている。


消毒したのになんで?


『痛かったでしょ?夏場は
 汗かくし、蒸れやすいから
 こまめにガーゼを変えるか
 いっそ乾かして瘡蓋にした方が
 いい場合もあるのよ。
 今日は必ず病院に行きなさいね。
 とりあえず応急処置だけしておくから
 そこに名前と部署名書いてくれる?』


『私が書くからいいわ。
 先生少し外しますが戻ってきます
 のでここで彼女を待たせてもらって
 もいいですか?』


えっ?


ボードの紙にスラスラっと古平さんが
記入すると、医務室から出て行ってしまった。


『酷いことされたのね‥‥
 相当痛かったでしょ?』


「いえ‥‥大丈夫です。」


本当はあの時も泣きたいくらい
痛かったし怖かったけど、
もう自分のことで誰も巻き込みたく
なかった。


手当をしてもらった後、
出勤してきた時の服に着替え終わり
医務室で待たせてもらうと、
ガチャガチャっとドアが開く音がして
古平さんが顔を出した。


『井崎さんお待たせ。
 それじゃあ行こうか。』

「はい。
 先生ありがとうございました。」


『お大事にしてね。お疲れ様』


先生に頭を下げると、
古平さんとエントランスに出る
扉を開けて外に出た。


えっ!?