まだ数枚入っていたので差し出すと、
そのまま筒井さんの指が私の顎を
捉えて顔を近づけてきた



『亮と何してて泣いたんだ?』


ドクン


そんなにボロボロと泣いてないから
バレないと思っていたのに、
筒井さんにはなんで分かったの?


あまりに近すぎるその距離に
耐えられなくて俯いたあと
少しだけそこから体を離した


口の中に残る甘いチョコレートと、
胸が締め付けられる痛みが入り混じる


筒井さんの過去を聞いて苦しくて
泣いたなんて言えない。


でも適当なことを言っても
多分この人には見破られてしまう



「‥‥悩みを相談してるうちに
泣いてしまって、亮さんが私を
励ましてくれました‥‥
本当にただそれだけです。」


筒井さんのことを頑張れって‥
応援してくれたから嘘は言ってない。


『‥‥そうか‥‥
 何かされたかと心配してた。』


筒井さん‥‥


泣いたことを叱られるのではないかと
不安になっていたから、ホットして
体から力が抜けてしまう。


数年前の筒井さんが荒れていたなんて
今の目の前にある姿からは
とても想像できない


「ごめんなさい‥‥」


『お前がなんともないならいい。』


「ふふ‥なんともないですよ?それに
 ものすごく元気ですから。」


『‥‥‥‥』


暗闇の中で筒井さんに笑いかけると、
いただいたチョコレートをもう一つ
口の中に含んだ。


『せっかくだからやっぱり貰うわ』


「はい、どうぞ美味しい‥ンッ」


先程のように筒井さんが私の顎を
指で捉えるとあっという間に
唇が重なった。


‥‥えっ?な、なんで!?
なんでまたキスされてるの?



チュッと離れる時に聞こえた音に
顔が熱くなり、驚いているとやっぱり
その後に鼻を思いっきり摘まれた


「痛っ!!‥つ、筒井さん!!」


『フッ‥‥。さっき言っただろ?
 泣いたらまたするって。』


えっ!!?
‥‥あ!!
亮さんの前で泣いた罰ってこと!?


鼻を摘んで押さえていると、
横から伸びてきて手がまた私の頭を
クシャっと撫でた


『あまり心配させるな‥‥』


「‥‥はい、すみません。」


きっと今、私の顔は
茹蛸のように真っ赤だと思う。


隣でタバコを吸いながら星空を
見上げる筒井さんと同じように
私も星空を見上げる


罰ゲームだとしても、好きな人と
素敵な星空の下でしたキスを
私は一生忘れることはないと思う


『明日の朝一緒に走るか。』


「はい、楽しみにしてます。」