えっ?なに?
真っ暗なんだけど‥‥
もしかして誰もいない?


ついさっきまで電気が着いてて
話し声が聞こえたのに外に
出掛けたとかかな?


パァン!!!!


「ギャァ!!!」


いきなり室内に響いた無数の音に
驚きすぎて耳を塞ぐと
ガサガサっと音がしたので
ゆっくりと閉じていた瞳を開けた


『誕生日おめでとう!!!』


へっ?


入り口付近で座り込んでいた私の元に
4人が近づいて来ると、
古平さんが蝋燭に火がついた状態の
ケーキを目の前に差し出してきた。



『明後日誕生日なんでしょ?
 少し早いけどお祝いしたくて。』


ビックリしすぎて腰が抜けたのか
立ちたいのに力が入らないでいると、
筒井さんが後ろから脇に手を入れて
立たせてくれた。


『井崎さんおめでとう。』

『霞ちゃんハピバースデー!』


『ほら泣いてないで‥‥おめでとう』


筒井さんに背中を押されると、
古平さんが差し出してくれた
ケーキに向かって息を吹きかけた


『おめでとう!!!』


「あ、ありがとうございますっ‥‥でも
 どうして明後日が誕生日って
 分かったんですか?」


そんなの誰にも言ってなかったし、
ましてや入社して間もない間柄で
お祝いなんてしてもらえると
思ってもみなかった。


『総務課に本配属が決まった時に
 井崎さんのデータを入力してたら
 たまたま5月5日だったから
 なんか覚えてたんだよね。』


「そうだったんですね‥‥
 嬉しいです、ありがとうございます」


部屋の電気が着けられると、
ダイニングテーブルに移動をして
みんなで写真を撮ってから
ケーキを食べた。


『それにしても霞ちゃんのギャァは
 録音するべきだったよね?
 失敗したなぁ。』


「や、やめてくださいよ。
 本当にビックリしたんですから。」


ただでさえお化粧もしてなくて
スッピンだったから恥ずかしいのに
あんな声まで出してしまった



ゲラゲラ笑う蓮見さんを
亮さんが叱ってくれている


確かにもう少し可愛い声が出れば
良かったのにって思うけど、
咄嗟に出た声が本当だと思うから
恥ずかしいけど仕方ない


『飲むか?』

「えっ?いいんですか?」
 

酎ハイしかだめって言われてたのに、
筒井さんがシャンパングラスに
みんなと同じスパークリングワインを
少しだけ注いでくれた。


「ありがとうございます。
 大人の仲間入りみたいで嬉しいです」


『フッ‥‥。
 こどもの日生まれだけどな。』


ククッと喉を鳴らして笑う筒井さんが
笑ってる顔が誕生日のお祝いとして
貰えるなら幸せだって思う


『そろそろ寝ようかな。』