筒井さんが
口にチョコレートを含んだ後に
私が淹れた珈琲を一口飲むと、
また喫茶店で見た時のように笑った


『お前と同じ飲み方を知らないと
 分かってやれないからな‥』


「そ、それってお子様って事ですよね?
 いいんです。私はこのチョコが
 1番好きなんですから。」


もう一つ包み紙を向いてから食べると
ほろ苦い甘さが口の中で溶けていく


あーやっぱりこのチョコ美味しい‥‥
お子様だっていいんだ。
私は私でいいって言ったの筒井さん
なんだから。


『フッ‥。こんな手のかかる
 でかい子供は1人でじゅうぶんだ。』


そう言うとまた鼻を摘まれてしまい、
怒る私を見て筒井さんが声を出して
ゲラゲラと笑った。


『あ、またちょっかい出してんの?』


『は?出してねぇよ。向こうで静かに
 映画見てろよ。』


『だって君たちイチャイチャしてるから
 あっちのラブシーンより
 気になるでしょ?知ってた?
 さっきからみんな見てたって。』


ええっ?


振り向くと、亮さんも古平さんも
さっと目を逸らしたものの、
私は一気に顔が熱くなる


『あれ?
 それうちのチョコレートじゃん。
 しかもこれ滉一が企画で出して
 通ったやつじゃない?
 確か珈琲と一緒に食べたくなるって』


『フッ‥そうだったか?』


「えっ!?じゃあこのチョコって
 筒井さんが考えたんですか?」


喫茶店でも何も言わなかったし、
今だって‥‥‥私‥‥好きとか
普通に言っちゃったよ。


『1番好きなんだろ?このチョコが。』


ドキン


『えー!霞ちゃんそうなの?
 このチョコが1番好きなの!?
 へぇーーこのチョコが?』


「蓮見さん!ち、違いますって。
 筒井さん止めてくださいよ!」


『放っておけ、あんなの。』


しれっとまたチョコレートを
食べる筒井さんが私を見ると、
ニヤリと笑って珈琲を口に含んだ


信じられない‥
知ってて黙ってたなんて恥ずかしすぎて
ここから逃げ出したい。


別に目の前の本人に
好きって言ったわけじゃないけど、
物凄く恥ずかしくて顔を覆った


夕方、あんなに降っていた雨が
嘘みたいに止むと、雲に隠れていた
夕日がとても綺麗に差し込んだ


「晩御飯はどうされるんですか?」


『毎年カレーだよ。俺が毎年
 作らされてるんだよね。』


「そうなんですか?だったら私が
 今年は作りますから出来るまで
 ゆっくりされてください。」


片付けもさせてしまったから
お礼に何かがしたかったので
ちょうど良かった。


『じゃあ一緒に作ろっか。
 井崎さんとあまり話せてないし、
 なかなか会えないと思うから。』


「はい、もちろんです。」