『あ、起きた?井崎さんよく寝てたね。
 初めてだったから疲れてない?』


リビングに入ると暗いところで
みんなが洋画を見ていたみたいで、
古平さんが声をかけてくれた。


「すみませんでした。片付けとか
 しないまま寝てたなんて。」


寝顔を見られていたことも
恥ずかしいのに、先輩に片付けまで
させてしまうとは情けない‥‥


『そんなに気にしない。
 作ってない人たちが片付ければ
 いいんだって。それよりあったかい
 飲み物でも飲んでおいで。
 体冷えたでしょ?』


「ありがとうございます。」


蓮見さんと亮さんは映画に
集中していたので静かにキッチンの方へ
行きお湯を沸かした。


『俺も珈琲飲みたいから一緒に頼む。』


「はい。ブラックでよろしいですか?」


カウンターチェアに座って肩をコキコキ
左右に動かしている筒井さんに
そう伝えると、一瞬動きが止まった後
私の方をじっと見てきた


「な、なんですか?」


『ん?ちょっと思い出してただけ。
 ‥今日のオススメを一つ頼む。』


なんか懐かしいその台詞に私も
あの頃の筒井さんを思い出す。


珈琲豆と手動のミルがあったので、
丁寧にひいていたら、みんなが
それに気付いたみたいで結局
5人分の珈琲を淹れることになった。


本格的なドリッパーやフィルターが
置いてあったので、美味しく淹れれるかは分からないけどマスターのように
ゆっくり丁寧にお湯を注いでから
少しだけ蒸らしカップに注いだ。


「お待たせ致しました。
 コナコーヒーになります。」


貴重なハワイアンコナコーヒー豆が
置いてあったのでありがたく使わせて
もらった


蓮見さんってやっぱりお金持ちだよね?

この家もそうだけど、こういった
調理器具もどれもおしゃれで高そう‥


『ありがとう、いただきます。』


全員分カップに注ぐと、
私は一旦部屋に行き鞄から
持ってきていたチョコレートを出し
またみんなの元へ戻った。


『霞ちゃん珈琲淹れるの美味いじゃん!
 自己流?それとも習った?』


「あ、そのアルバイトしてたので、
 マスターのを見て見よう見まねで
 やっただけです。
 豆がとてもいい豆なので
 美味しいんですよ。」


『それでも美味しいよ。
 井崎さんありがとね。』


亮さんにもお礼を言われて
またみんな映画を
見に行ってしまったので、
筒井さんの隣に座って
チョコレートを食べた。


『それあの時のと同じやつだな。』


「はい。私珈琲は苦くて飲めないん
 ですけどチョコレートと一緒なら
 ブラックでも飲めるんです。」


またお子様って言われるんだろうな‥


でも本当に我が社のビターチョコは
珈琲とよく合うから好きなんだよね


包み紙を向いて口に入れようとしたら
それを取られてしまい筒井さんが
食べてしまった。