『乾杯!!』

サンシェードを広げた中庭で
5人で乾杯をすると私以外の4人は
ゴクゴクと冷たいビールを喉に
流していく


誰1人酔った雰囲気もなく、
まるでお水を飲むような速さだ


『あー上手い!!
 昼から飲んで食べて最高!!』


自分では買えない高いお肉は
口に入れると柔らかくて甘くて
それだけで幸せになるくらい美味しい


『井崎さんどんどん食べてね。
 早くしないとみんな大食いだから
 なくなっちゃうから。』


「ありがとうございます。
 すごく美味しいです。」


当たり前だけど、普段が一人暮らしな
だけに、1人でご飯を食べるより、
大勢で食べると美味しく感じる。


お肉や野菜も沢山あったのに、
本当にあっという間になくなっていき、
隅の方でさっき握った焼きおにぎりを
ゆっくり炙りながら3本目のお酒を
開けようとしたら隣からそれを
取られてしまった


『もうやめとけ。まだ夜があるから。』


筒井さん‥‥


代わりに渡された500mlの烏龍茶の
ペットボトルの蓋を開けてくれると
頭を小さく下げて受け取った


もしかしてもう顔が赤いとか?


心配になり渡されたペットボトルで
頬を冷やしてみる


今回は泣いてないから飲んだとしても
赤くなるだけだと思うけど、
他の人が全くシラフだから、
もし赤かったら少し恥ずかしい


『こだみたいに飲めなくても
 お前はそれでいいんだよ。
 この後どうせみんな少し寝るから
 その間に少し休憩しとくといい。』


「筒井さんも寝てくださいね。
 運転されてましたし。」


ウッドデッキでゲラゲラ笑いながら
3人で何故かオセロをして楽しんでいる
のを眺めながらトングでおにぎりを
ひっくり返した。


『フッ‥いつもと違うな。』


煙草を吸いはじめた筒井さんが、
私のお団子頭に触れると、
クスッと笑ってから白い息を
私にかからないように吐いた


「長い時は纏めやすかったんですけど、
 中途半端な長さなので普通に縛るか
 お団子になっちゃうんです。
 おかしいですか?」


肩の長さまで髪の毛が
前より伸びてはきたけど、まだ
なんとなく纏めにくくて短い毛が
襟足に落ちてきてしまう


結構乾かすのも洗うのもラクだから
これくらいでもいいかなって
切ってから思えたんだよね‥‥


『どうして切ったんだ?』


えっ?


髪のゴムに指をかけられると
ピンっと弾かれ、纏めていた髪の毛が
バサっと肩に落ちていく


私の髪の毛が長かった時なんて
アルバイトをしてた時しかない。
それに切った理由なんてくだらなさ過ぎて言えるわけもない


「特に理由なんてないですよ。
 なんで取るんですか?暑いので
 返してください!」


筒井さんの手からヘアゴムを
取り返すと、急いでまた1つに
髪の毛を纏めて縛った。


その後はタバコの煙が吐かれるだけで
何も言ってこなかったけど、
久しぶりにフラれたことが
浮かんでしまい胸が苦しかった。