一旦家に帰ってから
スーパー行かないといけないな‥


なるべく節約したいから
お弁当用のおかずの常備菜を
毎週作ることにしたのだ。


4年間で貯めたお金はまだあるし、
お母さんが今は少しは
助けてくれるけど、
できる限り自分でこなして安心させたい


カフェでお茶をして
リフレッシュした私は、
駅に向かうために
大通りに出て歩き始めた。


週末だからどこも人が多いし、
荷物が多過ぎて通行してくる人に
何度もぶつかりそうになる


『井崎さん!』


えっ?


何処かから名前を呼ばれた気がして
キョロキョロしてると、
路肩に停められていた車から
降りてきた人が私の方に
駆け寄ってきた。


「えっ!!筒井さん!こ、こんにちは。
 ビックリしました‥」


スーツ姿しか見たことなかったから
カジュアルの私服姿なのも新鮮だけど、
昨日の今日でまた会えたことに
驚いてしまう


『違うかな?って思ったけど、
 やっぱり井崎さんだったな。
 それにしても‥‥‥
 すごい荷物だな?爆買い?』


「ち、違いますから‥‥会社用の
 服を少し‥‥カジュアルなものしか
 持ってなかったので、アッ!!」


後ろから歩いてきた人がドンっと
ぶつかってきて倒れそうになると、
咄嗟に腕を引かれて
道路に近い場所に連れてかれる


『昨日勝手に帰っただろ。』


ドキン


蓮見さんに鍵を渡したことをすっかり
忘れていた!!


「あ、あの、すみません、昨日は
 ご馳走になったのにお礼もせず‥
 ウワッ!」


『‥人が凄いな。とりあえず乗って?
 送ってくから。』


「えっ!!そんな大丈夫ですから!」


『そんな大荷物抱えて
 この人混みを歩くと危ないから。
 早く乗って。』


助手席のドアを開けられてしまい、
もう断れないと思ったので、
お辞儀をするとフッと笑われた


荷物を全部取られると後ろの席に
置いてくれ、
筒井さんも運転席に回り込み
タイミング見てから乗った。


『家に今から帰るのか?』


「えっ?はい‥‥そうですけど」


乗ったものの、近い距離感と、
筒井さんの車の中にいるっていう
夢のような現状に
どうしていいか分からない


『昨日送れなかったから送るよ。』


「ええっ?そんなそれはダメです!」



こんな休日のプライベートな時間を
私なんかに使わせるわけにはいかない


『さっきもぶつかってたし、
 この荷物の量は転ぶと危ない。
 井崎さんがダメでも俺が心配だから
 家まで送らせて欲しい。』


ハンドルに片手を置いたまま私の方に
視線を向けられ真顔でそう言われると
本当の事だからか
何も言えなくなってしまった


「‥‥すみません。
 よろしくお願いします。」


『うん、いい子。』


いい子って‥‥
まるで小さい子の頭を撫でるように
くしゃくしゃっとされると、
伸びてきた手がシートベルトを取り
ガチャっとはめてくれた。