先にお風呂にお湯をはり
交代でジャグジーのお風呂を
堪能してから、筒井さんがようやく
冷蔵庫に入っていた白ワインを
美味しそうに飲んだ。


ここに来るために1日お酒を
飲まずにいてくれたなんて
さっきまで知らなかった‥‥


「お摘み持って来てたんですね。」


冷蔵庫にはお水は入っているけど、
それ以外は持ち込まないとないので、
別荘からお酒や食べ物を筒井さんが
持ってきていたみたい。


『お前も少し飲む?』


「はい、じゃあ少しだけ。
 チョコレートもあるんです。」


鞄から持って来ていたチョコレートを
取り出すと筒井さんからグラスを
受け取った。


星空が綺麗に見えるように、
明かりを最低限にしてソファに
座ると、天井を見上げる


本当になんて綺麗なんだろう‥‥
この建物をこの場所に建てた人は
星が好きなのかな‥‥


『少し真面目な話をしてもいいか?』


ドクン‥



暗い明かりが筒井さんを背後から
照らし、顔が暗くて表情も読み取りにくいけど、筒井さんの手に触れて
手を繋いだ


どんな話か分からないけど、
今分かるのは、話す筒井さんの方が
緊張してるということ


向き合うって決めたから逃げない‥




『大学の頃‥‥将来を考えれるくらい
 大切な人がいた。』


えっ?


『同級生で、
 いつも明るくて周りまで華やかに
 する人でな?ずっとこれからも
 一緒だと信じて過ごしてたんだよ。』


ドクン‥‥


ソファにもたれた筒井さんが瞳を閉じ、
私の手をさっきよりも強く握るのを感じ、両手で右手を包み込んだ



『3年付き合って、あと1年で卒業
 っていう時に、彼女は突然俺に
 何も言わずに大学は辞めて、
 当時住んでいたアパートも契約が
 とっくに切れていて誰も住んで
 いなかった‥‥』


えっ?
酷い‥‥そんなことってあるの?


『フッ‥。ずいぶんツテを当たったり
 友人に聞いて探したけど誰1人行方を
 知らなくてさ。少ししてから
 違う人と一緒に住んでるって噂を
 耳にして初めてそこで捨てられてた
 んだって実感したんだ。』


筒井さん‥‥


『未練がましく見に行ったら、
 知らない男と手を繋いで歩いてて、
 幸せそうに笑ってた。
 そのあとからだな、荒れたのは‥。』


亮さんが言ってたのはこのこと
だったんだ‥。
心から愛していた人が突然去り
荒れていたなんて‥‥



『必死で貯めて来たお金も必要なくなり
 寂しさを埋めるためにも遊んだ‥。
 それでもやっぱり忘れられない
 ものなんだよ、簡単にはさ‥‥。
 でもそんな時出会ったのがマスター
 だったんだ。』

えっ!?

マスターって喫茶店の?

私はたったここ3年くらいの
筒井さんしか知らないけど、
そんなに前からマスターと
知り合いだったなんて‥‥‥