早くて聞き取れない部分もあったけど、私が筒井さんの花って聞こえた。

そして独り占めして
意地悪して悪かったとも‥‥


イリスさんにとって、筒井さんは
とても大切な人だと教えてくれた。
それに筒井さんが私のことを
とても大切に思っているとも
教えてくれた



どうしよう‥‥‥
この10日間がツラくて苦しくて
もう無理だと思って来たのに、
涙が出そうになってしまう


エントランスから出ていかれる時に
私に向かって手を振ってくれた
イリスさんにもう一度お辞儀をすると
華やかな彼女は帰って行ってしまった



もしもう一度会えたなら、
珈琲店であんな酷い態度を
とってしまったことを謝りたい
心からそう思えた。



「筒井さ‥‥ごめんなさい。
 私1人で勝手に勘違いをして‥」


仕事が終わった後待ち合わせをした
場所に行くと、車の外で煙草を
吸っていた筒井さんに抱きついた。


抱きついた私をそのまま腕の中に
閉じ込めてくれると
あまりの温かさに涙が溢れてしまう



『フッ‥。俺と彼女が何かあるとでも
 思ったのか?』


腕の中で小さく頷くと、
呆れたようにため息が吐かれる


もしかしたらこのまま筒井さんは
イリスさんと‥‥って何度も考えた


子供みたいに不釣り合いな私より、
大人で自然に寄り添う彼女の方が
いいんじゃないかって


「キスしたりハグしてましたし、
 大好きなマスターにまで紹介
 されにきたのかと思って‥‥」


『フッ‥。あんなの気持ちがこもって
 なければただの挨拶だ。彼女は
 とっくに結婚もしてるし、
 子供もいる。俺のことは営業に
 いた頃指導してくれてたから
 子供みたいに思ってるだけだ。』


えっ?


筒井さんが営業だったことにも
驚くけど、イリスさんが結婚されて
いたことに驚き筒井さんから離れた。



『お前が何を心配していたかは
 知らないが、あんな態度を取られたら
 俺だって傷つく‥』


頭を優しく撫でられると、
また涙が溢れてしまい、筒井さんの
手がそれを優しく拭ってゆく


「ごめんなさい‥‥
筒井さんが大切で失いたくないのに、
私が臆病で待たせてるから‥もう
いらなくなっちゃうんじゃないかって‥‥」


つまらない嫉妬と勘違いで、
また1人で自己嫌悪を起こして
学習能力のなさに呆れてしまう


こんな私で筒井さんは
本当にいいのかなって思えば思うほど
自身がなくなってしまうのだ



『‥‥‥今日はうちに泊まれ。』


えっ?