「はい。かしこまりました。」


どうしてここで筒井さんの名前が
出てくるのか分からなかったけど、
社長命令ともなると
急いで人事に電話をかけるしかない


プルルルル 


『(はい、人事の伊藤です。)』

「おはようございます。一階受付の
 井崎です。筒井さんを
 お願い出来ますか?」

『(お待ちください。)』


こちらから筒井さんに
電話をかけることが初めてで少し
緊張して手に力が入ってしまう


『(お電話変わりました筒井です。)』


トクン‥

電話口から聞こえる落ち着いた低い声に
愛しさが込み上がるけど、仕事中なので
いつも通り落ち着いて話した。


「受付の井崎です。社長から今、
 筒井さんを受付に呼んでほしいと
 頼まれました。」


『(‥‥分かった。)』


受話器を置くと、
ちょうどエントランスに車が
到着したのか、社長自ら出迎えに
行かれたので背筋がピンっとのびる


本社からだからやっぱり
トップが直々に対応になるのかな。
毎年のことなら来年のためによく見て
覚えておこう‥



うわ‥‥
なんて‥‥綺麗な人なんだろう


後部座席から降りて来たお客様は、
真っ白なシャツにキャメルカラーの
膝丈のタイトスカートを合わせ、
スタイルの良さが一目で
分かるほど美しい人だった。


隣にはスーツを着た男性が2人
一緒に並び、社長とハグをして
挨拶を交わしたあと
エントランスに入って来た


佐藤さんと合わせてお辞儀をした後も
ジロジロ見てはいけないものの、
このエントランスが一気に華やかに
なるくらいの存在感に同姓でも
見惚れてしまうほどだ。


明るめの
ライトブラウンのサラサラの長い髪、
緑と青が混じったような瞳もその
美しさを際立たせていた


「Iris!!」


『Akira!!』


えっ?


エントランスに来た筒井さんが彼女を
抱きしめ彼女もまた筒井さんに
抱きついたのだ。


まるで映画のワンシーンを見ているくらい、美しい光景なのに、次の瞬間イリス
さんが筒井さんの頬を両手で包むと
背伸びをしてキスをした


嘘‥‥‥
どうしてキスなんか‥‥‥


挨拶で頬にするなら分かるのに、
明らかに唇にしたその光景をこれ以上
見ていられなくて目を逸らした


『Tu m'as manqué. J'attendais avec impatience le jour où je pourrais te rencontrer.』
(会いたかった‥あなたに会えるのを
 とても楽しみにしていたわ。)


『Moi aussi. Je voulais vous rencontrer.』


ドクン