そうして、私と蓮はイルカショー会場へ来た。
 「前いこうよ」
 と、蓮。え、と私はびっくりした。
 「ちょちょっとりょう、前の方にいたら目立っちゃうじゃない」
 と、私はいった。
 「え」
 おいおい、天然か。
 「あ、いやだからあ、私たちのことがあ、ばれちゃうじゃない?」
 と、私はゆっくりいった。
 「え、あ、そうか」
 と、蓮は気づいたようだ。蓮は片手を後頭部にやって笑った。
 「後ろの方で見よう」
 と、私はいった。
 「うん」
 私たちは後ろの方の高い席についた。
 「アクア・ビーストショー、わくわくするなあ」
 と、蓮。
 「え、ああ、そうだね」
 と、私はいった。
 やがて、音楽が鳴ると、ステージにお姉さんたちが現れた。
 「はあい、皆さんこんにちはあ」
 と、キャップをかむったお姉さんがいった。
 「こんにちはあ」とみんなが言う。
 「こんにちは」と蓮が大声を出した。
 私はひやっとした。前にいる先ほどの女子中学生くらいのこたちが振り向いてきた。
 「ちょ、ちょっとりょう」
 と、私。
 「ねえ、今の声って、やっぱ蓮君ぽかったようなあ」
 と、女子中学生くらい。
 私はぎくっとなった。
 「ええええええええ。馬鹿っポイのに蓮君なわけないよ」
 私はほっとした。
 「そ、そうよね」
 と、女子中学生くらい。
 「はあい、皆さんこれからの1時間、たっぷりイルカのショーを楽しんでください」
 と、お姉さんが言った。