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「じゃあ……ごめんね。大きな声だして……変な話して」
「あたしこそ、無理に聞いてごめんね! ……大丈夫かや?」
「うん。聞いてくれてありがと。話したらすっきりした」
喫茶店を出て、あたしはニコッと笑う。
「……本当に……ほんとの理由言わんのかや? この町からいなくなるからだって」
「うん。決めたことだから。梢も秘密にしてね?」
「綾がそれでいいなら……誰にも言わんけん」
「ありがと」
「綾……あの……また話そうね?」
そう言ってくれて、すごく嬉しい。嬉しいけど。
「……ダメだよ。梢と仲良くなったら、みんなと離れた意味がないから」
「……じゃあ、綾と仲いいふりして理一くんに近づきちょーだけだが!」
じゃあ……って……。嘘がバレバレだよ。
「あたしはもう理一と話してないから、あたしと仲よくしても無駄だよ」
「うっ……」
ばっさり言うと、ショックを受けた顔をする梢。おかしくて、笑ってしまう。
「やっぱり優しいね、梢」
「……優しいのは綾だけん」
優しくなんかないよ。
梢の優しさに、危うく寄りかかってしまうとこだった。
「寂しくなったら呼んでね!」
「ふはっ、呼ばないよっ」
呼べるわけがない。
少しむつけてる梢に、笑顔を向ける。
「さよなら。梢先輩」
悲しみに歪んだ瞳を一瞬だけ見て、あたしは帰路につく。
……ありがとう梢。もう話す日はこないけど、今日だけは、親友になれた気がしたよ。