「綾……」


頬をつたった涙が、ポタリと手に落ちた。


「京と……ずっと一緒にいたい」


いたい。ずっと一緒に。


「でも無理なの……あたしはいなくなるから……だから離れるしかないんだよ」


これ以上、京を縛りたくない。悲しませたくない。傷つけたくない。


「京くんが……好きなの?」


好きだよ。


すごくすごく。何よりも、誰よりも。あたしは京を求めてる。



「京くんだって一緒にいたいに決まっちょるが!」

「じゃあどうするの!?」


あたしは耳を塞ぐ。誰の声も聞かないように。自分に言い聞かせるように。


「……一緒にいて、突然あたしがいなくなったら……京はどれだけ悲しむの? ……あたしはもう充分、京を傷つけてきたんだよ……。これ以上、傷つけろって言うの……?」


そんなこと、できない。


「あたしは……京の笑顔が好きなの……」


奪いたくない。

ずっと、笑っていてほしいの。


「綾……ごめん……もういいが……ごめんね……」



梢の言葉が頭の奥で、響いた。