「……何でそこまで…」

「……いなくなるからだよ」

「……みんなに言わんの? 言ったほうが……」

「言わない。このまま、あたしのこと嫌いになって、恨んでくれればいい。忘れてほしいの」

「そんな……」


梢の目に涙が溜まる。


バカみたいだよね、あたし。でもこれしか思いつかなかったの。


「あたしがいなくなる前にあたしを嫌いになったら、あたしがいなくなった時、悲しまなくて済むでしょう?」

「そんなことないが……!」

「……言わないでね。誰にも」

「言わん……言わんけど……綾はどうするけん。ずっとひとりでいる気かやっ」

「……そうなるね。それを望んだのは、あたしだもん」

「ひとりは寂しいがっ」

「……梢は優しいね」


涙を流す梢に、微笑みかける。


「綾はっ……人の気持ちを考えすぎだけんっ。綾は? 綾はどうしたいがっ……それが1番の望みじゃないでしょう?」

「……それが1番の望みだよ」

「本当はどうしたいがっ」


梢の流れる涙を、ただ見つめる。


本当は、どうしたい……?


目頭が熱くなる。視界が、ぼやける。


本当は……。



「京と一緒にいたい……」


熱い涙が、頬をつたった。