「……だからなの? いなくなる前に、傷つける前に……離れたのかや?」

「そうだよ」

「どうして? いつになるかまだ分かっちょらんのでしょ? 時間はあるがや」


困惑した表情でそう言う梢に、あたしは小さくかぶりを振る。


「……あたしと一緒にい続けても、京も理一も幸せになれない。あたしはいつかいなくなるのに、これ以上ふたりを苦しめたくないの」

「そんな……」

「それに、あたしがふたりの隣にいるせいで、頑張れない女の子がいるんだよ。梢だけじゃないよ。他にもたくさんいる」


……それが分かったからこそ、京が東京に行った本当の理由が分かったからこそ。


あたしは誰の幸せを願うべきなのか……病気のあたしは、どうするべきなのか考えた。


「……あたしね、ふたりには幸せになって欲しいの。いなくなるあたしなんかより、別な人とずっと……幸せになって欲しいんだ」

「他の友達は……? 同じ理由?」

「うん。……文化祭の花火のジンクス知ってる?」

「……見た人たちと、ずっと一緒にいちょるってやつ?」

「そう。みんなで見ようねって話してたんだけど、あたしは見なかった。ずっと一緒にいられないから」

「……綾」

「友達と離れたのは、あたしが京と理一、どっちも選ばなかったことも、きっかけなんだけどね」

「喧嘩したの……?」

「あたしひどい言い方したから。心配してくれた親友に冷たいこと言っちゃったし、京の親友は、ありえないって感じだし。でも、そう仕向けたのはあたしだから、いいんだ」


苦笑いすると、なぜか梢が泣きそうな顔をした。