「あたし、小5の時から京と付き合ってたの」

「小5!?」

「そう。それでね、中学に上がる前に京は何も言わないで東京に行っちゃって。あたし、京が大好きだったから、すごい寂しくて……毎日泣いてたの」

「うん……」

「でね? 中2の時に、理一と同じクラスになったんだ」

「そうだったんだ……」

「理一はね……京ばっかりのあたしを、救ってくれたの。何度も何度も、元気づけてくれたんだ」

「理一くんらしいね」

「ははっ。そうだね。……それであたし、理一が大切になったの。好きって感じではなかったけど……失いたくなかったの」

「……、そっか」


梢は瞬きをしながら、視線を落としたり上げたりするあたしを、ジッと見ていた。


「それでね、中3の冬に京を忘れて理一を見ようって思ったの。……でも、京が今年の夏に帰ってきたの」

「……うん」

「あたし……京に惹かれたの。理一を見ようと思ってたのに、本当は京に逢いたくて、逢いたくて仕方なくて、やっと逢えたって……」

「……」

「それで……京に告白されたの。でも答えられなかった。京を選んでも、理一を選んでも、どっちかを傷つけちゃうから……どっちも大切で、失いたくなかったの」

「綾……」

「その気持ちをふたりは分かってて、待ってるから選んでって言ってくれたんだ。……だからずっとあやふやにしてて……理一にもハッキリ言ってなかったの。……ごめんね」


眉を下げて梢を見ると、頭を左右に振ってくれた。