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「へぇ〜……こんなとこあったなんて知らんかったが」
キョロキョロと店内を見渡す梢先輩。
あたしたちは地元の小さな喫茶店に来ていた。以前、郁子に連れてこられた喫茶店だ。
なんか気分が落ち込んでる時に、ここ来るよなぁ……。
「隠れ家みたいだけんっ」
ニコッと笑う梢先輩に、あたしも微笑み返す。
「お待ちど〜」
「あ、ありがとう」
郁子の彼氏でもあるウェイターの小次郎くんが、ホットストレートティーをふたつ運んできた。
「ごゆっくり」
微笑む小次郎くんに笑い返して、あたしはティーカップを手に取る。
「あの……何かごめんね。話しちょーだなんて、……あんなこと言ったんに」
眉を下げて謝る梢先輩に、あたしはストレートティーをひと口飲んでから口を開く。
「気にしてませんから、謝らないで下さい。紅茶、冷めちゃいますよ?」
「……ありがとう」
梢先輩は安心したように微笑み、紅茶を飲んで「おいしい」と笑った。
あったかい……。人と話すだけで、すごく安心する……。