あたしは視線を逸らして、梢先輩の足下を見る。
和也と話した昼休みから1週間経ち、あたしはみんなと話すことを極力避けていた。
あたしがいなくなった場所には、麻実が代わりに入った。
「え? 綾と梢先輩って知り合いだったんかや?」
麻実がそばに駆けより、白々しくあたしの顔を覗く。
「知り合いにもなるでしょ?」
麻実があたしの悪口を、梢先輩に散々言ったんだから。あたしがそう目で訴えると、麻実の顔に焦りが見えた。
「……梢先輩、行きましょ」
「え? あっ、うん!」
麻実の顔を見ることも、京たちのほうを向くこともなく、あたしは歩き出す。
「綾」
進めた足が、止まる。
「また明日」
恐る恐る横を見ると、京があたしを見つめていた。
「……バイバイ」
素っ気なく言って、あたしはまた歩き出す。
唇が震える。
胸が苦しい。
喉が痛い。
涙を我慢すると、いつもこうなる。