「綾!」


窓の外を見ていたあたしは、遠くから聞こえた声の主を探す。


見ると、陽子と朋が教室の前のドアから手招きをしていた。


あたしは席を立って陽子のもとへ向かうと、急に腕を掴まれて廊下に引っ張り出された。


「あ……おはよ」

「何で言ってくれんかったが!」


とりあえず挨拶をしたら、陽子が涙目になって声を張り上げた。


「……聞いたんだ?」

「和也から聞いたがっ」


朋まで涙目になっている。


「ごめんね。ふたりにも迷惑かけたよね」

「相談して欲しかったけんっ! 綾はいつもそうだが! 誰にも何も言わんで、勝手に決めよる!」


陽子の目から流れてしまった涙を見て、あたしの心にフィルターがかかる。


「相談は……あくまで相談でしかないよ。結局決めるのはあたしなんだもん」


冷たい言葉だと思う。でも、こう言うしかないの。


あたしの言葉を聞いて、陽子の顔は怒りに満ちていく。