あれから数日、あたしは考えていた。郁子が言っていた言葉を。


─―京が不器用なこと、知っちょるじゃろ?――


京は確かに不器用なところはあった。だから、何?


それが今さら、何に関係あるの。


「………」


あたしには分からない。

もう、京のことは忘れると決めたんだ。今さら考えたって、意味がないんだ。


「……どうしろっていうのよ」

「何が?」


大きく溜め息をついたと同時に、理一があたしの机に肘をついて現れた。


「びっ……くりしたぁぁ!」

「何? 悩みごと?」

「……んー。分かんない」

「ふはっ! 何かやそれ」


……言えるわけない。あたし、何か嫌な女……。


「まっ、いいけど! 綾さ、今日なんか予定あっちょー?」

「特に何もないよ」

「じゃあ遊ぶぞー!!」


そう笑顔で理一が言うので、考えるのをやめた。


あたしには理一さえいればいい。

たとえ恋人という関係ではなくても、今のあたしに、理一は欠けてはならない人なんだから。